はじめに
皆さんは、シャンプーと一緒に使うリンス・コンディショナー・トリートメントといった製品を選ぶとき、どのように選びますか?
「パサつきを抑える」「しっかりまとまる」「ダメージを補修」「ノンシリコン」など、さまざまな売り文句がありますが、実際どのように選べばよいか迷うことも多いのではないでしょうか。
本記事では、リンス・コンディショナー・トリートメントといった製品に含まれる成分の中でも、髪の「コンディショニング成分」にスポットライトを当てます。
どのような機能を持っているのか、そしてどのような成分が存在するのかを、「シリコン」と「ノンシリコン」を軸に解説してゆきます。
成分名と一緒に実際の商品例も紹介しながら、店頭での商品選びに役立つ情報をお届けします。
ぜひ最後までご覧ください。この記事を通して商品の選び方が変わります。
コンディショニング剤の役割
多くのリンス・コンディショナー・トリートメントに共通する主な役割は
- 静電気を抑え、パサつきをなくす
- 毛髪にツヤや滑らかさを与えるとともに保護する
という二つに大別されます。
この中で、1を担うのが「界面活性剤(洗浄成分)」、2を担うのが今回の主人公の「コンディショニング剤」の成分です。
それぞれについて軽く解説しましょう。
静電気を抑え、パサつきをなくす
シャンプーをして濡れた状態の毛髪は、通常マイナスの電気を帯びています。
一方、リンス・コンディショナー・トリートメントに用いられる界面活性剤は、水の中で通常プラスの電気を帯びています。
マイナスとプラスの電気はお互いに引き合いますから、プラスの電気を帯びたものを与えてあげると、プラスとマイナスで電気は打ち消されるので、静電気によるパサつきを抑え、まとまりのよい髪に仕上げることができます。
ツヤや滑らかさを与える
そもそもコンディショニング剤はどんな物質でできているのでしょうか。
あとで詳しく紹介しますが、コンディショニング剤には大きく分けて
- シリコン
- シリコン以外の成分(油脂)
の二つが存在します。
皆さんも知っての通り、水と油はほとんど混ざりあいません。またシリコンもすぐれた撥水性をもっています。
そのため、毛髪を油脂やシリコンでコーティングすることで保湿性を高め、乾燥を防ぐことができます。
それに加えてこれらの物質は、潤滑油のような役割も果たしてくれ、ツヤや滑らかな手触りを実現するのです。
リンス・コンディショナー・トリートメントの違いって?
さて、パサつきを抑え、毛髪にツヤや滑らかさを与えるリンス・コンディショナー・トリートメントですが、なぜ名前が分かれているかご存じでしょうか。
実は、ざっくりとした役割は「パサつきを抑え、毛髪にツヤや滑らかさを与える」ということで間違いないのですが、その中で、ちょっとした違いがあります。
役割の違い
リンスやコンディショナーは毛髪の表面を滑らかにすることによって髪の流れを整えやすくし、パサつきを抑えるという機能に特化しています。
頭皮を弱酸性に保つという機能もあります。
それに対し、トリートメントは毛髪の表面を整えるというリンス・コンディショナーの機能に加えて、毛髪の内部に成分を浸透させることで毛髪の内部から傷みをケアしたり質感をコントロールしたりすることに特化しています。
毛髪の表面を整えるだけなのか、内部からケアする機能も持つのかという点でこれらは異なります。
ちなみに、ヘアパックやヘアマスクと呼ばれる製品もトリートメントと同じような機能をもつのですが、より効果が高いものや特徴的な効果を持つものが多いとされています。
ですから、使い分けが肝心です。
普段のお手入れではシャンプーとリンス・コンディショナーを使い、毛髪が痛んでいたり、カラーやパーマを行った直後はシャンプーとトリートメントを併用するとよいでしょう。
どんな成分があるの?
それでは、実際にコンディショニング剤として使われている成分を紹介していきます。
先に述べたように、コンディショニング剤はシリコンとシリコン以外の成分に大別されますので、それぞれについて紹介しますね。
シリコン
シリコンは、毛髪をコーティングして保湿や潤滑油の役割を果たす成分です。
ケイ石(SiO2)という種類の岩石を原料とし、原子どうしの結合が安定した構造をしているために安定性や電気絶縁性(電気をシャットアウトする性質)に優れているほか、らせん構造も有するため柔軟性に富むという特徴もあります。
その安定性もさることながら、人体に対する毒性が低いため、化粧品をはじめ哺乳瓶や医療機器などにも利用されています。
コンディショニング剤に用いられるシリコンの中でも種類はいくつかに分かれ、詳しい役割もそれぞれにありますので、商品に実際に記載されている成分名や商品名とともに解説します。
ジメチコン類
化粧品に利用されるシリコンとして最も基本的な成分で、幅広い温度域でその機能を発揮できる優れものです。しかし、ダメージを受けた毛髪に対してはなじみにくく、ダメージケア効果は小さいです。
- 成分名:ジメチコン、ジメチコノール、シクロペンタシロキサンなど
- 役割:すぐれた撥水性があり、潤滑油としての役割を果たし滑らかな手触りの髪を実現するほか、毛髪表面のキューティクルをコーティングして保護することができ、枝毛防止の効果もある。
ジメチコン
このジメチコンが配合されている商品としては、
「ほとんどのコンディショニング剤」
ということになりますが、特にジメチコンと配合率が高い商品の例としては、
が挙げられます。
このジメチコンという最も基本的な成分を基礎として、様々な改良を加えたシリコンが存在し、以下に述べるように「アミノ変性シリコン」や「ポリエーテル変性シリコン」といった分類がありますが、ほとんどのシリコン成分には名前のどこかに「ジメチコン」という名が付きます。
ちなみにジメチコンはシャンプーにも同じ目的で配合されることもあり、例としては花王の「Essential(エッセンシャル)」シリーズに配合されています。
ジメチコンに似た成分たち
ジメチコンに非常に似た成分として、ジメチコノールやシクロペンタシロキサンがあります。
どちらも基本的な役割はジメチコンとほとんど変わりません。
ジメチコノールにはジメチコンと比べてより柔らかな毛髪に仕上げたり、コンディショニング効果の持続性がジメチコンよりやや高いという特徴があり、主に配合されている商品としては
シクロペンタシロキサンは広がりや伸びがよいとか、他の成分と混ざりやすいという理由から配合され、主に配合されている商品としては、
- ジェイピーエスラボの「クレイナル スムーススパ ヘアオイル」
- I-neの「ボタニスト ボタニカルヘアオイル エアリースムース」
アミノ変性シリコン
アミノ基と呼ばれる毛髪となじみやすい構造を有しています。
そのため、ジメチコンと比べるとより毛髪への吸着性が高く、またコンディショニング効果の持続性も高い成分です
- 成分名:アモジメチコン、アミノプロピルジメチコン、アミノエチルアミノプロピルジメチコンなど
- 役割:毛髪への高い吸着性から、毛髪のしっとり感や柔軟性を与え、まとまりのよい髪を実現する。
この中でも実際の商品にはアモジメチコンが配合されることが多く、実際に使われている商品名としては、
- ユニリーバの「LUX ルミニーク ダメージリペア マスク」
- 花王の「メリット ピュアン ヘアコンディショナー」シリーズ
- Kracieの「いち髪 ヘアコンディショナー」、 「いち髪 ナチュラルケアセレクト モイストトリートメント」
などがありますが、上記の商品以外にも幅広く使用されているようです。
また、「(アモジメチコン/〇〇)コポリマー」という成分が配合される時もあります。この成分はアモジメチコンと他の成分をくっつけたもので、アモジメチコンと近い効果を発揮すると考えて頂いて構いません。
アモジメチコン以外の成分は
- アミノプロピルジメチコン
- I-neの「ボタニスト ボタニカルヘアマスク」シリーズ
- ビスアミノプロピルジメチコン
- P&Gの「PANTENE スーパーモイスト スムーストリートメント 」
といった商品に配合されています。
ポリエーテル変性シリコン
ポリエーテルと呼ばれる水となじみやすい構造を有しているため、水に濡れた時の毛髪のきしみを抑えたり、ドライした時のパサつきを抑えます。
- 成分名:PEG-8ジメチコン、PEG-12メチルエーテルジメチコンなど「PEG-(数字)ジメチコン」というものが多い
- 役割:しっとりとした感触を与え、ドライ時のぱさつきや濡れた時のきしみを低減
実際に使われている商品名としては、
- PEG-9ジメチコン
が代表例です。
シリコン以外の成分
さて、ここからはシリコン以外に分類されるコンディショニング成分とそれを配合した商品で紹介していきます。
様々な成分が存在しますが、相性の良いものを一緒に配合しているケースがほとんどになります。
沢山の成分が一つの商品に入っていてどう選んでいいかわからない、という方もいらっしゃると思いますので、商品紹介の後に商品の選び方も説明しています。
ぜひ最後までご覧ください!
油脂
油脂は傷んだ髪に栄養を補給したり保護したりする用途で、主に植物性の油が利用されます。
具体的な成分名と商品例としては、
- ヒマワリ種子油
- ツバキ種子油
- コメヌカ油
- アルガニアスピノサ核油
- ホホバ種子油
など、様々な種類が存在します。
炭化水素
炭化水素は、炭素と水素のみからなる成分で、水との混じりにくさを活かして頭皮や毛髪に膜をつくって保湿効果を発揮してくれます。
石油や植物、動物といった様々な原料から製造されます。
植物油や後述するエステル類と相性がよく、一緒に配合されることが多いです。
具体的な成分名と商品例としては、
- イソドデカン
- パラフィン
- スクワラン
といったものがあります。
高級脂肪酸
高級脂肪酸も基本的には炭化水素と同じく保湿効果を発揮してくれますが、化粧品の粘度の調整や抗菌作用もある成分です。
具体的な成分名と商品例としては、
- セバシン酸
- イソステアリン酸
- ラノリン脂肪酸
といったものがあり、上記のように「○○酸」の名前で表示されているものは高級脂肪酸であることが多いです。
ただし「グルタミン酸」「乳酸」「クエン酸」などは例外です。
高級アルコール
高級アルコールは毛髪のツヤや滑りを改良してくれたり、他の成分同士の混合をしやすくする効果もあり、幅広い商品に配合されています。
具体的な成分名と商品例としては、
- セテアリルアルコール
- ステアリルアルコール
などがあり、多種多様な商品に配合されています。
エステル類
エステル類は毛髪の柔軟性や滑らかさを向上してくれたり、粘度が低いという特性からさっぱりとした使用感を与えてくれる成分です。
具体的な成分名には「○○酸××」といった名前のものがほとんどで、具体的な商品例とともに紹介すると、
- ステアリン酸グリセリル
- ミスチリン酸イソプロピル
- セバシン酸ジエチル
- ジリノール酸ジイソプロピル
- オレイン酸オレイル
といったものがあります。
MEA(18-メチルエイコサン酸)
MEAとは、脂質の仲間で、健康な髪のキューティクル各層の最表面に存在し、髪の美しさや手触りのよさに重要な役割を果たしています。
最表面に存在するがために紫外線や摩擦、カラーリング、パーマといった要因で欠けてしまうことが多く、リンスやコンディショナー、トリートメントに配合することで補給しようということになります。
実際の成分名と商品例としては、
といったものがありますが、他のコンディショニング剤の補助的な役割で配合されていることが多いです。
実際の選びかた
それでは上記の例を参考に、実際に商品を選んでみて下さい。
成分の確認のしかた
ほとんどの商品は法律上「化粧品」と分類されており、化粧品に使われている成分は必ずすべてを商品に記載し、その記載順は配合量の順にせねばならないことが「薬事法」という法律で定められています。
そのため、ドラッグストアなどの店頭で商品を手に取ると、必ず商品の裏側に成分名が配合量順に列挙されています。
Amazonや楽天をはじめとするオンラインショップにおいても、ほとんどの場合成分が概要欄に記載されていますが、オンラインショップにおける記載は義務化されていないため、記載がない場合もあります。
心配な場合は製造メーカーのホームページで確認するか、直接問い合わせると良いでしょう。
複数記載がある場合がほとんど
市販の商品は、
- 「ステアリルアルコール」と「ジメチコン」
- 「シクロペンタシロキサン」と「○○種子油」
など、上で紹介したコンディショニング剤を複数使用しているものがほとんどです。
いくつもコンディショニング剤の名前が記載されていると迷ってしまうかもしれませんが、先述のように配合成分の記載順はそれらの配合量の順になっているため、
上のほうに記載されている界面活性剤の種類を主な参考に商品を選ぶと良いでしょう。
まとめ
コンディショニング剤についての説明は以上となります。
商品を選ぶときの判断材料として成分の知識を持っておくと助けにもなりますし、自分に合った商品が一つ見つかれば、同じ成分を配合している別の商品も試しやすくなるでしょう。
本記事が皆さんのコンディショニング剤選びの一助になれば幸いです。
参考:
https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11120000-Iyakushokuhinkyoku/yakuyous_syounin.pdf