出産した後、多くの女性が抜け毛がひどくて不安に感じていることでしょう。
これは特別なことではなく、ほとんどの経産婦が経験しています。
なぜ産後に大量の毛が抜けてしまうのか、その原因を探り、自分に合った対策や解決法を見つけられるよう解説します。
抜け毛のピークや元に戻る時期なども説明するので、産後抜け毛について正しい知識を持ち、抜け毛の悩みを乗り越えていきましょう。
日本化粧品検定1級、サプリメントアドバイザー / webライター
辻 チャコ
【得意分野】美容全般、化粧品、美容、ヘアケア、健康、ダイエット 【経歴】広告代理店・営業職を経てフリーランスのコピーライターへ。双子の母でもあり、歌手活動も行う美容ライター。
産後に抜け毛が増える原因は女性ホルモンの乱れ
産後に大量の抜け毛が起こる原因は、大きく変化する女性ホルモンにあります。
ヘアサイクルと併せてわかりやすく説明します。
産後はエストロゲンが減少する
女性ホルモンには「エストロゲン(卵胞ホルモン)」と「プロゲステロン(黄体ホルモン)」の2種類があります。
通常は交互に増減を繰り返して生理周期となっていますが、妊娠するとどちらのホルモンも分泌量が大きく増えます。
特にエストロゲンは髪の成長期を延長するはたらきがあり、妊娠中には本来寿命が来て抜け落ちるはずの髪の毛が抜けにくくなるのです。
ところが出産するとエストロゲンは急激に減少して妊娠前に戻ります。
すると妊娠中に抜けにくくなっていた髪が一斉に成長期を終えて抜け始めます。
これが産後抜け毛の大きな要因となっています。
ヘアサイクル(毛周期)とは?
前述した髪の「成長期」とは、髪が生えてきてから抜け落ちるまでの「ヘアサイクル(毛周期)の一時期にあたります。
ヘアサイクルは、髪が生えて伸びる「成長期」、成長が衰えて抜けやすくなる「退行期」、成長がストップして毛が抜ける「休止期」の3つの時期を繰り返しています。
このうち成長期の髪は全体の85〜90%とされており、毛1本ごとに周期が異なるので、一斉に抜け落ちたり、生えてきたりせず、いつも同じ程度の髪の量を保っています。
成長期の長さは女性の場合4〜6年なので、1年で約15㎝伸びるとしても最大で90㎝程度しか伸びないということになります。
休止期にある髪は全体の10〜20%ですが、産後は一時的に休止期に入る毛が多くなるということです。
休止期の長さは2〜3カ月とされているため、再び成長期に入れば髪は生えてきます。
産後抜け毛のピークは?いつからいつまで続くの?
また生えてくると言われても、抜け毛が大量だと心配になるものです。
産後抜け毛のピークがいつなのか、いつまで続くのかを解説します。
抜け毛は産後すぐに始まる
抜け毛は1日50〜100本なら正常の範囲です。
しかしながら産後の抜け毛は、多いケースで200本以上と言われるので、ショックも大きくなります。
産後の抜け毛は出産後すぐに始まりますが、多くの人が産後2〜3カ月後に自覚し始めます。
この時期はちょうど育児が大変な「魔の3カ月」と呼ばれる時期と重なるため、産後に抜け毛が起こることを知らなければ、ストレスに追い打ちをかけることに。
出産後は、ほとんどの女性が抜け毛を経験するということを知り、あまり思い詰めないようにしましょう。
抜け毛のピークは産後4〜6ヵ月
これまで経験したことのない大量の抜け毛は、いつまで続くのでしょうか。
中には分け目が目立ってきたり、頭皮が透けて見えてきたりと、見た目にも変化が起こってしまう場合もあります。
抜け毛のピークは、出産後4〜6カ月とされています。
この時期を乗り越えれば、抜け毛の量も減っていき落ち着いてくるでしょう。
赤ちゃんもハイハイや伝い歩きをし始めるかわいい盛りですが、動き出すとまったく目が離せなくなります。
産後6ヵ月〜1年で新たな髪が生える
抜け毛がピークを越えると、ヘアサイクルも徐々に成長期に入るため新たに髪が生え始めます。
髪の成長は平均すると1カ月に1㎝程度なので、産後6カ月〜1年ほどで透けていた地肌が目立たなくなってきます。
ただし、生えてきても短いうちはツンツンとして目立つ可能性があるので、ヘアスタイルなどで工夫が必要なこともあります。
参照元:フィットクリニック
要注意!産後の抜け毛が増えてしまう原因
産後の抜け毛は女性ホルモンのバランスが乱れることが原因ですが、その他にも抜け毛を増やしてしまう要因があります。
いずれ生えてくるとはいえ、これらが続くと抜け毛を増やしてしまうリスクがあるので注意してください。
睡眠が十分にとれていない
新生児には1日8〜15回程度の授乳が必要で、ママは昼夜を問わず赤ちゃんのお世話に追われます。
当然ながらまとまった睡眠はとれずに、慢性的な睡眠不足になってしまいます。
髪の成長に必要な成長ホルモンは、入眠後3〜4時間後に多く分泌されます。
長い時間睡眠を取れない場合でも、入眠後すぐに深い眠りに入ることができれば、成長ホルモンの分泌を促すことができます。
育児中のママは、睡眠の質にこだわるとよいでしょう。
寝る前はスマートフォンを見ない、寝具を心地良いものにする、寝室は真っ暗にして寝るなど、できる対策からやってみてください。
子育てによる過度なストレスを抱えている
ストレスは血行不良を引き起こし、頭皮の毛細血管まで酸素や栄養を届けることができなくなってしまいます。
その結果、髪の成長が滞ってしまい産後の抜け毛を助長することに。
産後の大きなストレスは、子育てによるものが大きいでしょう。
特に初産の場合は、何もかもが初めてのことでとまどいもあり、孤独に陥りがちです。
また「完璧に育児をしなければ」という気負いも、ストレスの元となります。
がんばりすぎず、赤ちゃんの日々の成長をできるだけ楽しみながら肩の力を抜きましょう。
ときにはパートナーや親にも頼り、ほんのわずかでも自分の時間を持つことも大切です。
無理なダイエットによる栄養不足
妊娠中に体重が増加してしまうと、産後にダイエットをがんばってしまいがちです。
しかし食事を極端に減らすなどの無理なダイエットは、栄養不足によって抜け毛を進行させてしまいます。
なにより母乳に直接影響があるため、大切な赤ちゃんにまで栄養がいかないという事態に陥ってしまいます。
早く痩せて元の体型に戻りたい気持ちはわかりますが、ダイエットにとっても栄養バランスのよい食事が第一であることを理解しておきましょう。
産後の抜け毛は病気じゃない!悩み過ぎもNG
新生児の育児をしていると、家に閉じこもりがちになり孤独を感じてしまうママも多いものです。
そこに抜け毛の問題があれば、悩み過ぎることも。
産後の抜け毛は出産した女性のほとんどが経験します。
このことを知っておくだけでも「自分だけではない」と気が楽になるはずです。
もちろん産後の抜け毛は病気ではありませんので、気に病む必要もありません。
大切な髪のことなので不安になるのは当然ですが、先輩ママがいれば話してみると理解してもらえるでしょう。
赤ちゃんが1歳の誕生日を迎える頃には、抜け毛問題もおさまっているだろうと割り切ってみてはいかがでしょうか。
参照元:ザ・スタイルディクショナリー
今からできる産後の抜け毛対策7選
すぐにできる産後の抜け毛対策を7つ紹介します。1度にすべてやろうとしなくてもよいので、できることからはじめてみてください。
毎日7時間以上の睡眠をとる
産後まもないママが、連続して毎日7時間以上の睡眠をとることは非常に難しいでしょう。
睡眠には熟睡しているノンレム睡眠と浅い眠りのレム睡眠があります。
基本的にはこの2つを約90分周期で繰り返しており、短い睡眠であってもノンレム睡眠に入るように眠ることが大切です。
しっかりとノンレム睡眠に入れるように睡眠の質を上げれば、1時間半の睡眠を1日5回とれは7時間以上の睡眠を確保できます。
新生児の頃は赤ちゃんもまとまって寝てくれませんが、徐々に2〜3時間眠ってくれるようになっていきます。
できるだけ赤ちゃんと一緒に眠るようにして、睡眠時間を7時間以上とれるようにしましょう。
ストレスを溜め込まないようにする
赤ちゃんのお世話は本当に大変です。
パートナーがなかなか理解してくれない場合には、余計にストレスも溜まることでしょう。
育児中のママに限りませんが、ストレスはホルモンバランスを乱し、人の健康を阻害します。
産後でただでさえホルモンバランスが崩れているママならなおさらです。
ストレスを溜め込まないよう、適度に発散させましょう。
パートナーや親に少し赤ちゃんをみていたもらったり、自治体のサービスなどを活用したりして自分の時間を作るとよい気持ちの切り替えにもなります。
必要な栄養をしっかりと摂取する
抜け毛対策としては、髪の成長に必要な栄養をしっかり摂ることが大切です。
今は抜け毛が多くても、やがて成長期となって生えてくる髪のために、しっかりと髪の元となる栄養素を積極的に摂取しましょう。
もちろん、抜け毛の対策にもなります。
抜け毛予防として摂りたい食品を、以下の表にまとめました。
ただし栄養素で大切なのはバランスなので、どれかひとつだけ食べていればよいというものではありません。
バランスよく食べることを意識しましょう。
タンパク質 | 青魚、豚肉、卵、大豆製品、乳製品 |
ビタミン | 豚肉、まぐろ、カツオ、しじみ、かぼちゃ、アボカド、にんにく |
鉄分 | レバー、貝類、ほうれん草、ひじき |
亜鉛 | 牛肉(赤身)、ブロッコリー、牡蠣、高野豆腐 |
育毛サプリを取り入れる
バランスの良い食事が大切なことはわかっていても、忙しいときはつい簡単な食事で済ませてしまうこともあります。
また普段の食事からはどうしても摂りにくい栄養素も。
そのような場合には、育毛サプリメントを取り入れてみるのもひとつの方法です。
上の項で紹介した栄養素のうち、摂りにくいものがあればサプリメントで補うとよいでしょう。
ただし、サプリメントはあくまでも補助食品です。
サプリメントだけ飲んでいれば十分な栄養が摂れるわけではありませんので、補助的に活用しましょう。
髪や頭皮に優しいシャンプーに変える
毎日行うシャンプーで、髪や頭皮にダメージを与えていることがあります。
洗浄力が強すぎたり、頭皮や髪質に合わないシャンプーを使い続けていると、産後の抜け毛のピークが過ぎても、健康な髪を育てることを阻害することも。
特に洗浄成分には注意して、髪や頭皮に優しいシャンプーに変えてみましょう。
おすすめはアミノ酸系洗浄成分のマイルドなシャンプーです。
女性用の育毛剤を使う
産後の抜け毛に悩む女性向けに、多くの育毛剤が販売されています。
女性用育毛剤もありますが、産後は特にデリケートな時期なので、できるだけ産後女性向けの育毛剤を選びましょう。
成分には十分に気をつけて、無添加や低刺激のものを選ぶようにしてください。
育毛剤で髪が生えてくるというより、頭皮環境を整えて健康な髪を育てることが目的です。
ひどい抜け毛やハゲを目立たせない方法
産後の抜け毛は誰もが経験することとはいえ、通常よりひどい抜け毛が起こる方もいます。
見た目的にも薄くなってしまった場合の目立たせない方法を紹介します。
薄毛が目立たない髪型にする
ロングヘアは髪の重みがあるため、分け目が目立ちやすく、頭皮が透けて見えやすいヘアスタイルです。
薄くなってしまったら、思い切って目立たない髪型にするのがおすすめ。
イメージチェンジして気分転換にもなります。
ショートヘア
ショートヘアなら分け目を作る必要もなく、生え際や地肌の薄い部分をうまくごまかすことができます。
シャンプーや乾かすのにも楽で時短になるので、育児で忙しいママにおすすめです。
帽子やヘアバンドなど、ショートヘアならではのアレンジでお洒落も楽しめます。
ボブヘア
ショートヘアが苦手な方は、肩につかない程度の長さのボブヘアがおすすめです。
ボブといっても多くのバリエーションがあるので、ふんわり軽めにしたり、ゆるめにパーマをかけたり、さらさらストレートにしたりと、さまざまな楽しみ方ができます。
ある程度長さがあるので、寝ぐせがついたら結んでもOK。
ゆるめのアップスタイルにすれば、トップの薄さも隠すことができます。
ウィッグを着ける
女性用ウィッグにはさまざまな種類がありますが、産後の抜け毛には部分的なウィッグがおすすめです。
気になる薄い部分だけワンタッチで付けられるので、手軽なうえに自然で目立たちません。
ファッション用のウィッグも多種多様なものがあるので、この機会にファッションとして楽しんでみるのもよいでしょう。
ただし、長時間着けっぱなしにすると頭皮が蒸れたりしてトラブルをまねきます。
頭皮環境が悪化すれば抜け毛に繋がるため、外出するだけなど短時間の使用を心がけてください。
参照元:ベアAGAクリニック
SOLIA SHOP
本当に出産が原因?治療が必要な抜け毛
産後の抜け毛だと思っていたら、治療が必要な抜け毛だったという場合もあります。
専門医に相談した方がよいケースを紹介します。
髪の一部がごっそりと抜ける
髪の一部だけがごっそりと抜け、そこだけ頭皮がつるつるになっているような場合は、別の脱毛症を起こしている可能性があります。
一部だけ集中的に抜けて、10円ハゲと呼ばれるものができたら、円形脱毛症などが疑われますので、皮膚科や婦人科を受診してください。
頭皮にかゆみや赤みがある
抜け毛とともに、頭皮がかゆい、赤みがあるという場合は、頭皮にトラブルがあるかもしれません。
頭皮にかさぶたやひどいかゆみがあれば、脂漏性皮膚炎による脱毛も考えられるので、早目に皮膚科や婦人科に診てもらいましょう。
参照元:ザ・スタイルディクショナリー
産後の抜け毛にまつわるQ&A
産後抜け毛に関するさまざまな疑問にお応えします。
産後の抜け毛が別の薄毛に発展する可能性はある?
産後の抜け毛とほかの薄毛では、脱毛する原因が異なります。
したがって、基本的に産後抜け毛が別の薄毛に発展することはありません。
ただし、産後の抜け毛と別の薄毛を併発するケースはあります。
円形脱毛症やびまん性脱毛症、甲状腺や脂漏性皮膚炎などの病気に伴う脱毛などが考えられます。
抜け毛が長引いたり、かゆみや赤みなどほかの症状がある場合には、医師に相談してみましょう。
産後1年以上たっても抜け毛がおさまらない原因は?
産後の抜け毛はエストロゲンが急激に低下することによるものです。
産後1年以上経過すれば、次の妊娠をしていない限り女性ホルモンのバランスも元の状態に戻ります。
産後1年以上たっても抜け毛がおさまらないのは、別の原因による薄毛の可能性があるので、皮膚科など専門医に相談してみましょう。
授乳をしなければ産後の抜け毛は起こらない?
母乳は血液から作られていますが、産後の脱毛と授乳は直接関係していません。
産後の脱毛は妊娠中に増加した女性ホルモン・エストロゲンが急激に減少することから起こります。
母乳を作ることで血液が不足すると、髪へも栄養がいかずに抜け毛につながるのではないかと心配になりますが、産後抜け毛の原因とは言えませんので安心して授乳してください。
母乳は血液から作られるので、授乳中はバランスのよい食事と十分な水分補給が大切です。
参照元:フィットクリニック
産後の抜け毛を正しく理解して対策をはじめよう
産後の抜け毛は珍しいことではなく、むしろほとんどの出産経験者が通る道です。
これまで経験したことのない本数の髪が抜けて不安になりますが、4〜6カ月でピークとなり6カ月〜1年でまた髪が生えてきます。
産後は育児も始まり、水不足になったりストレスが溜まったりしがちな時期でもあります。
忙しいうえに抜け毛で思い悩むと、余計に抜け毛が悪化することになりますので、ゆったりとした気持ちで過ごしましょう。
すぐにできる対策を紹介しているので、記事を参考に実践してみてください。
参照元
SOLIA SHOP
AGAスキンクリニック
フィットクリニック
ザ・スタイルディクショナリー
スマイルAGAクリニック
ベアAGAクリニック