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シャンプーの防腐剤を徹底解説!体に優しい防腐剤はどれ?

シャンプーの防腐剤を徹底解説!体に優しい防腐剤はどれ?

はじめに

皆さんはシャンプーやリンス・コンディショナー類を選ぶとき、防腐剤について考えますか?

浴室に保管するこれらの商品は細菌やカビをはじめとする微生物に汚染されるリスクがあり、各々の商品には防腐効果が出るような工夫が施されていたり、防腐剤が配合されたりしています。

有名な防腐剤には「パラベン」などがありますね。

防腐剤には抗菌効果があるものの、その分皮膚に刺激が強く、人によってはアレルギー反応を起こしてしまうこともあり、近年では「パラベンフリー」「防腐剤無添加」を謳う商品も多く見られます。

本記事ではシャンプー類の防腐のしくみや防腐効果のある成分についてまとめていき、皆さんが商品を選ぶときの参考になるように商品の例もご紹介します。

是非最後までご覧ください。

防腐とは?

まずは、防腐とはそもそもどういうことか、またどのようなしくみでシャンプー類の防腐が行われるのかについて解説します。

シャンプー類は水分を多く含む液体であるうえ、湿度の高い浴室に保管することが多いため、細菌やカビをはじめとした微生物に汚染されるリスクがあります。

「防腐」とは「腐敗を防ぐ」ということですが、この腐敗は微生物によって起こされるものです。

シャンプー類に防腐・抗菌効果を付与して微生物が増殖しないようにすることで微生物による腐敗を防ぐのが「防腐」です。


避けられない微生物の混入

工場で大量生産されて消費者に届き、浴室で保管され使われる、という経路を辿るシャンプー類の液の中を微生物がゼロの状態を保つことは、ほぼ不可能です。

よって、基本的にどの商品も防腐対策が施されています。

微生物が混入する主な原因としては

  1. 原料からの混入
  2. 工場の製造過程での混入
  3. 入浴時の湯水が容器に入ることによるもの
  4. 容器の外側に付着した微生物が使用時や詰替え時に混入

といったものがあり、1, 2を一次汚染、3, 4を二次汚染といいます。

余談ですが、「商品の詰替えは容器をよく洗って乾燥させてから」と書かれている商品が多いのはこの二次汚染を防ぐためです。


防腐のしくみ

1次、2次のどちらの汚染においてもよく検出される微生物に「グラム陰性菌」というものがあります。

グラム陰性菌の例としては「大腸菌」「緑膿菌」などがあります。

このグラム陰性菌が、シャンプー類の大敵です。

一般的なシャンプーに配合される界面活性剤(洗浄成分)の種類はそれ自体ではこのグラム陰性菌に対する抗菌効果が低かったり、弱酸性という環境がグラム陰性菌の増殖に適していることがわかっています。

ただ、「せっけんシャンプー」の類はせっけんの強力な抗菌効果によって汚染リスクが低くなっているとされています。

一方、一般的なリンスやコンディショナー類に配合される界面活性剤は、グラム陰性菌に対し強い抗菌効果を発揮することが多いです。

ただ、界面活性剤の種類によっては抗菌効果が低いものも存在することがわかっています。

このように、商品によって抗菌・防腐の力は様々で、通常は配合する界面活性剤の種類や配合率の調整により本来の防腐力を最大限発揮しようと、実験や検査を繰り返して商品開発がなされます。

それでも防腐能力が不十分と判断される場合はパラベンのような防腐剤が追加で配合されることになるのです。

つまり、余計な防腐剤を用いずに十分な防腐効果を引き出している商品は、からだにやさしくて腐敗しにくい、理想的な商品と言えるでしょう。


防腐剤の主な種類と商品のまとめ

それではまず、シャンプー類に頻繁に利用される防腐剤の成分と、それを配合している商品をセットで紹介します。

多くの防腐剤は、強い抗菌力を発揮する微生物が限定的なため、他の防腐剤とセットで配合されることが多いです。

2つ以上の防腐剤をセットで配合することは、抗菌力を維持しつつ各々の防腐剤の配合量を下げることも可能にするという狙いもあるようです。


パラベン

パラベンは広い範囲の微生物に対し極めて高い抗菌力を持つ、代表的な防腐剤です。

広い範囲の微生物に対し抗菌力を持ちますが、先述のシャンプー類の大敵である「グラム陰性菌」に対してより「グラム陽性菌」という別の種類の微生物に対し特に有効であることがわかっています。

そのためグラム陰性菌に対し有効な他の防腐剤とセットで配合されることが多いです。

「パラベン」というのは複数の物質の総称で、実際には「メチルパラベン」や「エチルパラベン」といった物質が配合されます。

例としてメチルパラベンを配合している商品としては

  • Kracieの「マー&ミ― シャンプー」、「いち髪 ナチュラルケアセレクト」シリーズのトリートメント
  • KOSÉの「リヴァーシア」シリーズのコンディショナー、「ジュレーム アミノアルゲリッチ ディープモイスト」のシャンプー・トリートメント

といったものがあります。


安息香酸Na

安息香酸Naも一般的な防腐剤で、幅広い商品に配合されています。

安息香酸Naはパラベンとも非常によく似た構造の物質で、パラベン同様グラム陽性菌や、他にはカビなどの微生物に強い抗菌力を発揮します。

先述のパラベンや後述のフェノキシエタノールがセットで配合されていることが非常に多いです。

安息香酸Naを配合している商品としては、

  • I-neの「ボタニスト ボタニカルダメージケアシャンプー」
  • BCLの「サボリーノ 髪と地肌を手早クレンズ トリートメントシャンプー モイスト」
  • ユニリーバの「ダヴ」シリーズ
  • 花王の「エッセンシャルシャンプー」シリーズ

といったものがありますが、他にも非常にたくさんの商品に配合されています。


サリチル酸

サリチル酸は、微生物のなかでも「細菌」や「真菌」という種類のものに特に有効で、「メチルパラベン」や「安息香酸Na」よりも強い抗菌力を持つ強烈な防腐剤です。

サリチル酸を配合している商品としては

  • ジェイピーエスラボの「クレイナル スムーススパ シャンプー」
  • ストーリアの「モイスト・ダイアン パーフェクトビューティー ドライシャンプー」

といったものがあります。


フェノキシエタノール

フェノキシエタノールは先述のシャンプー類の大敵「グラム陰性菌」に対して強い抗菌力を持つ防腐剤です。

グラム陰性菌以外にも酵母やカビなど、広範囲の微生物に対し抗菌力を発揮する防腐剤です。

ただ、グラム陽性菌など一部の微生物に対する抗菌力は弱いことから、多くの場合パラベンや安息香酸Naなどの他の防腐剤と併せて配合されます。

実際、安息香酸Naのところで紹介した商品全てにフェノキシエタノールが配合されていますし、全て挙げることはできないのでここでは商品紹介は省かせて頂きます。


ソルビン酸K

ソルビン酸Kはカビや酵母に対し特に有効な防腐剤です。

しかし眼や皮膚に対し刺激が強いことがわかっており、近年では配合される商品が減少傾向にあります。

代表的な商品としては

  • ユニリーバの「ラックス スーパーリッチシャイン シャインプラス ツヤ出しシャンプー」、「ラックス プレミアム ボタニフィーク ダメージリペア シャンプー」他多数
  • ジョンマスターオーガニックグループの「R&Pシャンプー N」、「R&Pコンディショナー N」

といったものがありますが、先述の安息香酸Naやフェノキシエタノールを併せて配合していることも多いです。


メチルイソチアゾリノン

メチルイソチアゾリノンはグラム陰性菌、グラム陽性菌、カビなど幅広い範囲の微生物に有効な防腐剤です。

ただ安全性の問題が指摘されており、日本アレルギー学会や日本免疫皮膚アレルギー学会をはじめ、世界中のアレルギー関連の研究者や医師の間では2010年以降この「メチルイソチアゾリノン」による皮膚炎が増加していることが注目されています。

メチルイソチアゾリノンは,化粧品や乳児用ウエットティッシュなどに配合され,乳児例も含め接触皮膚炎が多く報告されている防腐剤である.(中略)日本におけるメチルクロロイソチアゾリノン・メチルイソチアゾリノンの陽性率は2010年以降増加傾向にあり,今後も同様の接触皮膚炎症例が増加すると考えられる.

出典:鈴木加余子(刈谷豊田総合病院皮膚科), 矢上晶子, 松永佳世子(藤田保健衛生大学医学部皮膚科学)(2016)最近増加している防腐剤メチルイソチアゾリノンによる接触皮膚炎.

こうした問題を受けて2014年にはヨーロッパで「スキンケア商品及びメイク用品には配合禁止」かつ「シャンプー類には0.0015%以下の配合率しか認めない」という規則ができました。

これをきっかけに近年では配合される商品が減ってきていますが、まだまだ使用されている防腐剤です。

このメチルイソチアゾリノンは

  • P&Gの「パンテーン エクストラダメージケア シャンプー」「パンテーン プレミアム ダメージリペア トリートメント」
  • ユニリーバの「ラックス ルミニーク」シリーズのトリートメント

といった商品に配合されています。


防腐剤ではないが防腐効果のあるもの

さて、ここまで防腐剤の成分について紹介してきましたが、こういった防腐剤を含まない商品は、もともとシャンプー類に利用される成分の防腐力を濃度や他の成分との上手な組み合わせによって引き出している、ということになります。

せっかくなら防腐剤フリーでも防腐力が十分にある安全な商品を選びたいですよね。

この章では、防腐剤以外でよくシャンプー類に利用される防腐効果のある成分を、配合されている商品とともにご紹介します。


カチオン界面活性剤

カチオン界面活性剤は洗浄成分の一種で、シャンプーにも配合されますがリンスやコンディショナーに配合されることが多いものになります。

微生物に対する抗菌力はもちろん、髪になじみやすいためにコンディショニング効果が高く、静電気の防止や柔軟性の向上といった目的でも配合されます。

ただ抗菌力を持つくらいですから、少し皮膚に対する刺激は強めの界面活性剤と言えます。

リンスやコンディショナーは頭皮に直接つかないように使用して、と言われるのはこのためです。

代表的な成分名と商品例としては

  • ポリクオタニウム-10
    • DHCの「マイルドピュアシャンプー」
    • 資生堂の「スーパーマイルドシャンプー」、「TSUBAKI プレミアムリペアシャンプー」
    • 花王の「メリット ピュアン」シリーズ
    • KOSÉの「ジュレーム」シリーズ
  • ポリクオタニウム-7
    • Kracieの「いち髪」シリーズ

といったものがありますが、ほとんどの商品ではメインの界面活性剤の補助的な役割で配合されています。


植物エキス

植物エキスは種類によって保湿や血行促進、育毛といった様々な効果を発揮してくれる成分ですが、もちろん防腐効果を持つ植物エキスも存在します。

ほとんどの植物エキスはほかの成分との兼ね合いでごく微量だけ配合されていることがほとんどですが、それでもしっかり効果を発揮してくれます。

代表的なエキスとそれを配合している商品名としては、

  • ハトムギ種子エキス
    • コスメテーションの「ハトムギシャンプー」
    • パイモアの「ディアクリーンシャンプー」
  • トウキンセンカ花エキス
    • ユニリーバの「ダヴ ボタニカルセレクション ダメージプロテクション」シャンプー・コンディショナー
    • KOSÉの「ジュレーム リラックス ディープトリートメント ヘアマスク」
    • I-neの「ボタニスト ボタニカルヘアウォーター」

といったものがあり、他には「レモン果実エキス」「セージ葉エキス」「イチョウ葉エキス」なども抗菌効果を発揮します。

これらの植物エキスは防腐効果だけでなく先述の保湿などの効果も併せ持ったものがほとんどですので、植物エキスを中心に構成された商品は安心・安心な上高品質と言えるでしょう。


実際の選び方

それでは以上の成分例を参考に商品を選んでみて下さい。

シャンプーをはじめとする化粧品には、配合されている全成分が容器に記載されていますので、その表示を見ながら商品を選ぶことがポイントになります。


成分表示の見かた

実際に商品を選ぶ際、成分表示には沢山の成分名が小さな字で書かれているので、一つ一つをじっくり見るのは面倒かもしれません。

ただし、先述のように防腐剤や植物エキスは複数のものをセットで配合し、各々の防腐剤の配合量は少なく設定されていることがほとんどです。

商品の成分表示は配合量の順にしなければならないことが「薬事法」という法律で定められていて、そのため防腐剤の名前は成分表示の下の方に書かれていることが多いです。

また植物エキスも配合量が僅かに設定されることが多く、多くが成分表示の下の方に書かれています。

一方で「カチオン界面活性剤」は商品によって配合量が異なりますが、他のメインの界面活性剤の補助として配合されることが多いので、成分表示の真ん中から下の方に書かれているでしょう。

実際に店頭や通販サイトで商品を選ぶときは、主に成分表示の下の方に注目してみて下さい。


まとめ

以上でシャンプー類の防腐剤についての説明は終わりです。

防腐剤は微生物の汚染を防ぐために必要なものではありますが、皮膚への刺激やアレルギー反応等の副作用を考えるとできるだけ防腐剤フリー、もしくはできるだけ防腐剤配合量の少ないシャンプー類を使いたいものですよね。

本記事が皆さんの安全・安心な商品選びのお役に立てば幸いです。


参考記事

化粧品・医薬部外品等ホームページ : 厚生労働省

シャンプー・リンス・ボディーソープにおける微生物対策 : 田中賢介, 1997, 国立研究開発法人科学技術振興機構 より

産総研:酵母を利用して非可食バイオマスから高機能界面活性剤を量産 : 産総研, 2013 

Title 公衆衛生分野における医薬品,化粧品および食品の分析法 ならびに特産食品の有効利用に関する研究

The Viewpoint of Formulation Design for Preservative- free and Paraben-free Cosmetics*

最近増加している防腐剤メチルイソチアゾリノンによる接触皮膚炎 – 日本アレルギー学会 : 鈴木加余子, 矢上晶子, 松永佳世子, アレルギー,  2016, 65(4/5), pp.545-545

当科で実施したイソチアゾリノン系防腐剤のパッチテスト陽性率と至適濃度の検討 : 関東裕美,  日本皮膚アレルギー・接触皮膚炎学会雑誌, 2017, 巻 11, 号 2

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